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第11回 皆、同じなので・・・

ご縁を頂いてから当稿で11回目となります。
前回迄は、僭越ながら私が信条としている考えなどについて最新時事を通し綴って参りましたが、今回は仕事を通して感じている事をお話しさせて頂こうと思います。

私達は“デザイン”に相当シフトした集合住宅を創っております。一般的には『デザイナーズマンション』と云われる賃貸住宅です。デザイナーズと聞くと、受けを狙ったり、奇をてらったり、華美に凝ったりするものとご想像されるかと思いますが、私達が考える建物はそれとは違います。

創業間もない頃、お部屋探しに来られたある新婚さんから云われた一言が端緒でした。
「今日は色々な物件を見せて頂き有難うございました。ただ申し訳ないのですが、何かしっくり来ないのです。実は、どれもこれも、皆、同じなので・・・。」
一瞬はっとしました。確かに、建物名や外観のタイル色は違うが、間取りはお決まりの型、諸設備も似たり寄ったり。いわゆる“同じ”なのである。立地の良し悪し、家賃の高低、新築か否か位しか選択肢がないのが実状でした。

“住まい”は、その人の実生活の“シーン”の主翼を担っており、ただ単に寝に帰るためだけの拠点ではないはずです。
ある人は新しいスタートを切るために、またある人は守るべき家族との愛情を育くむため、また明日への活力を充電するための人もいるでしょう。大袈裟に云うとそこは“自分の大切な表現体”でもあるのです。
住まう人達は、既に供給側の繰り出すレベルの遙か先を見つめています。
次回からは具体例とともに、更に深く掘り下げてゆくつもりです。

ぐんま経済新聞 「東毛エッセイ」 平成18年8月3日より転載