「何とか安定するまでに半年ほどかかったでしょうか」
こうして完成した「エスニック・プリーツ」を取引先に見せると、
「これ、面白い!」
と早速注文が入った。やがて店頭に並ぶと上場の売れ行きを見せたらしい。
「それから、この生地でも、この色でも、って注文が入りました。もう自分の技になったと思っていましたから二つ返事で引き受けたんですが、いざやってみるとこれが難しくて。同じ条件でやっているのに、生地が違うと何となく最初の華やかな雰囲気が出ない。最初と同じ生地でも色が違うとやっぱり仕上がりの雰囲気が違うんです」
それぞれの生地、それぞれの色で、ドラムの熱を変え、温度感知センサーの設定をいじり、少なくとも20回は試行錯誤を繰り返した。佐藤さんがこの技を自家薬籠中のものにできたと確信を持つまでには随分長い時間がかかったそうだ。
プリーツ加工の世界は物真似が横行する世界だ。ある工場が産み出した斬新なプリーツ柄は、しばらくするとほかの工場からも出荷されるようになることが結構ある。プリーツ加工を業とする目には、柄を見ただけで作業工程が見通せることが多いのだ。
だが、佐藤さんが産み出した「エスニック・プリーツ」には、まだ類似品が現れない。
「きっと、どうやってるのか分からないんでしょうね。この柄の加工法は、いまのところ我が社の企業秘密です」
佐藤さんオリジナルのプリーツ柄は20種類ほどに上る。真似されて類似品が出回ったものもあるが、「エスニック・プリーツ」の後を追うライバルはいない。
写真:工場には佐藤さんの試作品が山積みされている。
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