松平さんの抜き型作りはまずコピー機から始まる。客が持って来た形をやや厚めの紙に写し取る。出てきたコピーを、松平さんははさみで丁寧に切り抜いた。これが抜き型を作る原型になる。ここまでは誰でも出来る作業だ。
このコピーに布製のメジャーをあてて周囲の長さを測ると、グルグル巻きにされた鋼の収納場所に歩み寄り、この長さに合わせて切り取った。
「この鋼の平板を曲げたあとでコピーに合わせ、余りが出たら切り取ります。短かったらもう一度平板カットして新しく作り直します。ええ、短かったヤツはもっと小さな抜き型を作るのにとっておきます」
材料の鋼はできるだけ無駄にしない。
「だいたい一度でピッタリ合いますけどね」
というのは長年続けてきた経験のたまものだろう。
鋼の平板は片側、または両側に刃が付いたスウェーデン鋼で、幅は19㎜、32㎜、50㎜の3種類ある。幅が広いほど大量の生地を一度に抜ける。
「昔はね、刃が付いた鋼はなかった。だから、薄くて平らな鉄の平板をカットすると、まず片方を金槌で叩いて薄くし、ヤスリで磨いて刃を付けたもんです。刃が付いた鋼が出回るようになって仕事が随分楽になりました」
これで準備作業は終わった。松平さんは切り取った鋼の平板を持つと、ベンディングマシンに歩み寄った。
写真:工場に立つ松平さん
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