朝倉染布の大ヒット商品、超撥水風呂敷「ながれ」は魔法の布だ。
布なのに、濡れない。水をはじく。平らに置いて水をかけると、布に残った水は玉になって布の上をコロコロと転がる。まるで蓮の葉の上で踊る朝露だ。初夏、蓮の葉の朝露を集めて墨をすり、笹に下げる短冊に願いを書いた幼き日を思い出す。
だから、「ながれ」があれば雨も恐くない。降り出したら頭からかぶればいい。少しの雨ならこれでやり過ごせる。
濡らしたくないものがあれば、もう1枚の「ながれ」を取り出してくるむ。友人のカメラマンはいつもバッグに「ながれ」を潜ませている。
「いつ何時、雨にたたられるか分かりませんからね。『ながれ』さえあれば、撮影地で突然の雨に襲われて雨中でシャッターを押す羽目に陥っても、大事な商売道具のカメラは救えますから」
水が運べる。「ながれ」で袋をつくり、中に水を入れれば漏れ出すことはない。緊急時のバケツ代わりとして立派に役割を果たす。
それなのに。
「ながれ」は水を通す。「ながれ」で水を包み込んだだけではバケツになるのに、少し力を入れてギュッと絞ってやれば、縫い目からシャワーのように水がほとばしる。設備がないキャンプ地でも、水さえあればシャワーの心地よさが堪能できる。
水を通すほどだから、もちろん空気の出入りは自由だ。こいつを身にまとえば、雨ははじく。でも肌が発散する水分は閉じ込められることなく発散し、中は蒸れない。理想的なレインコートの生地である。