朝倉染布第15回 「ながれ」はいま

勢いがついたものは、軽く押すだけで加速度がつく。

2009年、それまで「ながれ」をデザインしていた担当社員が退社した。デザイン担当がいなくなれば普通は困る。だが朝倉剛太郎社長はこれを好機に変えた。社内デザインをやめたのである。デザインは外のプロから買う。

「それまでの『ながれ』は、超撥水という機能だけで売れていたともいえます。もっと売り上げを伸ばすには、機能に加えてデザインの良さも必要だと考えました。担当社員のデザインではやはり限界がありました」

と踏み切ったのである。
取引先などにデザイナーの紹介を頼みながら、もう一つ試みた。風呂敷デザインを公募したのだ。応募作品の中に、1点だけ優れたデザインがあった。いまでも販売を続けている「綾弧」である。

             

このデザインに最優秀賞を出した。表彰式の日、そのデザイナーと話すと、

「私を、『ながれ』のブランディング・コーディネーターにしませんか」

と提案された。

「ながれ」にはずっと関心を持っていた。今回はデザインで応募したが、出来ればブランド商品に育てたい。ちゃんと育てれば育ってくれる商品だ。任せてくれませんか。

促されて彼の話を聞いた。カタログの作り方、ネット通販のサイトでの「ながれ」の見せ方、商品タグの付け方……。

ずっと下請け加工の世界にいた朝倉染布の中からは生まれない新しい発想がたくさんあった。

朝倉社長に迷はなかった。即座にコーディネーターとして彼と契約した。日を追うように「ながれ」は多彩になり、販売は力強く伸び始めた。

2010年の東京国際ギフトショー。朝倉染布のブースでは、透明プラスチックの箱の中に置かれた超撥水風呂敷「ながれ」に、シャワーの水が注がれ続けていた。超撥水を目で見えるようにしよう、という朝倉剛太郎社長のアイデアだった。「ながれ」の上で水は水玉となって転がり、布には染み込まない。
恐らく、これまで誰も見たことがなかったディスプレーは多くのバイヤーの目を惹きつけたらしい。

「是非、我が社で販売したい」

という取引希望が急造したのである。

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