水と界面活性剤と、そして撥水剤を混ぜ合わせる。ぐるぐるかき回して、目で見て溶けたと思ったら撥水加工に使ってみる。加工が終われば、あとはテストだ。少なくとも、100回の洗濯に耐えるものにしたい。テストは、1日1、2回の洗濯を繰り返し、撥水機能がどれだけ残っているかを数値として現す。期待通りの数値が出なければ、再び出発点に戻って新しい組み合わせを試す。
いってみれば、同じことを100回でも1000回でも、これぞという結果が出るまで繰り返す。開発とは、忍耐力のいる地道な作業なのだ。
「ある時、かき回している時に撥ねて手にくっついたヤツが、皮膚から剥がれなかったんです。試験する前に『これだ!』と思いました」
「これだ!」で撥水加工をしてみた。加工した布を、毎日洗濯した。100回洗っても、撥水機能は8割ほど残った。これほど長持ちする撥水布は見たことも聞いたこともなかった。
(朝倉染布の試験機。開発の過程で活躍する)
水に溶け込ませたのはフッ素系の水溶性撥水剤と、それまでは危険な有機溶剤にしか溶けなかったシリコン系の撥水剤である。
朝倉染布の技術陣は、撥水剤のエマルジョン化(乳剤化)に成功した。それは、撥水加工から危険な溶剤を排除して加工作業を安全にしただけではない。これまでになかった超高機能の撥水加工技術を作り上げたのである。
開発には2年ほどかかった、と岩崎さんは記憶している。
「うちの技術陣はほんとうに優れ者の集まりです」
と朝倉社長は、当時の開発メンバーへの感謝を隠さない。