ハタと思いついた。そうか、繊維産地桐生を縁の下で支えているのは職人さんたちに光を当てねばならない! 彼らは、私が「自慢」しなければならない人たちだ!
桐生市役所を訪ねた。桐生が全国に誇ることができる職人さんのリストが欲しい。
ところが、リストはなかった。市役所にないのだから、他にもない。繊維関連企業のリストはあっても、それを支える職人、彼らの持つ技のリストはない。
そうであれば、自分で探すしかない。とはいえ、筆者には繊維産業に携わる人たちにはネットワークがほとんどない。あったとしても、門外漢の筆者は技を評価する目など持ち合わせてはいない。そこで11年の桐生暮らしで培った人脈から情報を持っていそうな知り合いを選び、教えを請うた。
「あの人なら間違いない」
と推薦を受けてたどり着いたのが、次回から連載する、筆者が「自慢」する桐生の職人さんとその技である。
いま、リストにあるのは約30人。しかし、取材を重ねればその数はさらに増えるかも知れない。桐生とは、半径わずか数㎞の狭い地域に、繊維のあらゆる技術が集積した世界でも希な町なのだから。
読者の皆様に桐生の実力を知っていただきたい。そして、繊維関連の仕事をしていらっしゃる方々には、あなたの仕事で使えそうな職人、技があったら一度お試し願いたい。桐生の技を縦横無尽に活用して新しい事業を興していただける起業家にご登場いただければ、筆者としてこれ以上の喜びはない。
なお、採り上げる職人さんたちは順不同である。技の優れ具合をランキングしたものでもなければ、糸から衣服まで仕上げられる流れに沿ったものでもない。取材が出来たものから文章にしていくので、職種で分けることも当初はできない。連載が終われば職種毎にまとめて見やすくしたいと考えている。しばらくお待ちいただきたい。
写真:水道山公園から桐生市内を臨む