目の付け所 古澤整経の1

それは古澤さんの努力と独自の工夫の成果ともいえる。
先代から事業を引き継いだのは1996年(平成8年)。引き継ぐやいなやすぐに工場を建て替えた。

「設備投資といえば、まず機械を新しくするのがこの業界では普通なんですけどね」

糸は空気が乾燥すると静電気が起きやすい。帯電した糸は糸同士で反発し合い、糸と糸の隙間が広がって巻きにムラができる。多くは、整経機に静電気除去装置を取り付けて対応する程度なのだが、古澤さんは

「工場から整備しなければ根本対策にならない」

(古澤整経の工場の壁は分厚く出来ている)

と考えた。
加えて、いまの整経機はコンピューターで制御する。コンピューターの心臓部は熱に弱く、温度が上がりすぎると暴走する。夏の車内に置いたiPodが時々動かなくなるのはそのためだ。
だから新設した工場は徹底的に機密性と断熱性を高めて外気に影響されない工場にした。窓はすべて2重サッシにし、壁や天井には隙間なく断熱材を分厚く入れた。

「だからでしょう。350㎡ほどの工場が、家庭用のエアコン2台で大丈夫なんです」

夜にはエアコンを切る。それでも工場内は夏場でも、朝入るとひんやりする。そこに加湿器を備えたのはいうまでもない。おかげで、この工場は1年中、温度と湿度がほぼ一定である。

まず、環境からを整える。古澤さんの目の付け所は普通とは少し違っている。

写真:最新の整経機の前に立つ古澤さん

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