特殊な糸のサイジング、整経も引き受けるのも、逆境の中での生き残り戦略の1つだ。
とにかく、
「頼まれたら、とにかくお引き受けするのがモットーです」
銅線を木綿で巻いた繊維のサイジング、整経を頼まれたことがある。相手が金属だと機械の部品を傷める恐れが大きく、嫌がるところが多いが、引き受けて納品した。あとで放射線防護服にするのだと聞いた。
産業資材として漁網、ロープ、帆布、テント生地などに使われるポリプロピレン繊維(PP)の整経には、当初泣かされた。とにかく、静電気がすごい。整経機についている帯電防止装置では間に合わず、帯電した糸同士が反発し合って整経機で綺麗に巻き取ることができない。
「工場に加湿器も入れてみましたが、何ともならないんです」
あれこれ考えた末、噴霧器で霧を吹きかけ、やっと抑えることができた。
これからも新しい糸、産業資材としてのファイバーが登場するだろう。サイジング、整経にこれまでの手法が通じないこともあるかもしれない。
「でも、私はいろんな糸のサイジング、整経をやって来て経験知がたくさんあります。どんな糸を持ち込まれても、何とかこなせると思っています」
星野浩芳さんはそう言うのである。
写真:整経に取り組む星野浩芳さん