だから、賞を取りたい。これまで取ったのは国内の賞だけだから、花のオリンピック、フロリアードの賞が何としても欲しいのだ。
「もう準備は始めたね」
アジサイの育種に着手した。どんな花になるのか、まだ秘密である。筆者も教えてもらえなかった。明かしていい時期が来るまでは応募作品の秘密を守る。それは、フロリアードに挑もうという生産者なら、誰でも同じだろう。
違うのは応募戦略である。
「僕、オランダの花として応募するよ」
さかもと園芸はいま、アジサイの生産、販売に関するライセンスをオランダの園芸家に与えている。さかもと園芸が創りだしたアジサイの新種をオランダの園芸家が育て、オランダ市場で販売しているのである。さかもと園芸にはパテント使用料が入る仕組みだ。
「それを使おうと思っている」
チャイさんが創り出すアジサイの新種のライセンスを、同じオランダの園芸家に与え、オランダで育てる。そのアジサイをフロリアードに出展する。
「そうすれば、輸出には必要な、面倒くさい国内手続きがいらなくなるね」
——だけど、受賞しても「さかもと園芸」の名前は出てこなくなるのでは?
「それはかまわない。創りだしたのがピムマ・ティアムチャイ、つまり僕だってことは必ず書かれるからね」
誰も思いつかなかった合理的な手順で世界の最高峰を目指す。
頑張れ、チャイ! みんな応援しているぞ!!
写真:提携先のオランダの園芸農場でチャイさん(右)