街の灯 「PLUS+ アンカー」の話  その11 石巻のおいしいイタリアンの会

雅子さんは自発的プランナーではない。自分で企画を立てて実行することはあまりない。だが、誰かが企画の種を持っていると、それに様々な枝葉をつけ、化粧を施して見栄えのする催しに仕上げるのは得意である。いわば、「受け身のプランナー」といえる。

「こんなことをしたいんですが」

と相談を受けると、やおら様々な知恵が湧く。だったらこうした方がいい、こんなことも加えてみれば、というアイデアが溢れてくる。

被災地から来た2人が

「私たちは多くの人に石巻に来て欲しいと思ってレストランを開きます。いや、可哀想な町としての石巻に来てほしいのではありません。綺麗な海と美味しいものがある町としての石巻に来て欲しいんです。いま開店準備をしながら、それを多くの人に伝えたいと思っています」

と話したとき、「受け身のプランナー」が起動した。突然、アイデアが浮かんだ。

「ね、だったらここでレストランを開いてみたら? 自分たちの店を開くまえにここでレストランをやってみるの。パーティ形式で人を呼んで、あなたたちの作る美味しいものを食べていただく。そうしたら、あなたたちの思いがたくさんの人に伝わるでしょ? やってみましょうよ、手伝うから!」

思ってもみなかった提案に、2人は当初戸惑っているようだった。だが

「店を開く前の練習にもなるでしょ?」

とダメを押されて2人の気持ちは固まった。

「わかりました。やらせてください」

2015年2月の2日間、「石巻のおいしいイタリアンの会」が開かれた。壁には女川出身の写真家が取った被災地の生々しい写真を展示した。これも雅子さんが付け加えた「枝葉」である。少しでも現地の姿を知って欲しかった。そして、食材はすべて石巻から運んだ。

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