長くお読みいただいた「街の灯」も今回が最終回である。という段になって、迂闊な筆者は大事なことを忘れていることに気がついた。
「PLUS+ アンカー」の「PLUS+」って、どういう意味なんだろう? 不動産会社「アンカー」に何を付け加えたというのだろう?
歴史的事実としては、命名作業は次のように進んだ。これからの説明をお読みいただく前提として、このページの見出しにある「PLUS+ アンカー」の表記は、ページ作成に使っているWordPressの機能の制約で「+」を小さく出来なかったことをお断りしておく。本当は、本文にあるように「+」と小さく表記するのが正しい。
「さあ、名前を決めようよ」
と「アンカー」社内で声を出したのは貴志さんだった。改装工事が進み、そろそろ看板を作らねばならないころだった。
当初は「アンカー」を店名から外す予定だった。ところが、それを聞いた人たちが
「アンカーが運営していると明示してもらった方が安心だ」
と言い始めた。
そもそも「アンカー」とは船の碇(いかり)のことだ。船が漂流するのを防ぐために海に投げ込まれる碇は、船にとっては最後の「頼みの綱」である。
「みんなの頼みの綱になる会社にしたい」
創業時に貴志さんが選び抜いて決めた社名だ。いわれてみれば、新しく開くカフェだってそんな存在になりたいではないか。よし、「アンカー」を店名に入れよう。
社内から様々な案が出た。その中に「PLUS+ アンカー」があった。
「これだ!」
貴志さん、雅子さんをはじめ全員の意見が一致した。
貴志さんは宣言した。
「だから、アンカーに小さな『+』をプラスする。いまの『アンカー』では出来なかった何かを加える場所。本当は大きな『+』の方がいいが、最初は欲張らない。小さな『+』から出発して、いつかは大きな『+』に育てよう。それに、カフェのお客様にも小さくてもいいから『+』をプラスできる場所にしていこう」