FREE RIDE ライダーは桐生を目指す その17  桐生を使おうよ!

ジャケットの縫製を頼んでいるのは、最初に「RIDERS N-3B」を一緒に作った縫製工場である。あれ以来、付き合いがずっと続いている。
工場の中に入ると、販売店の店頭では1着15万円、20万円の値札がつく高級ジャケット、ジャンパーが所狭しとぶら下がっている。全国の高級衣料専門のメーカがこぞって門を叩く縫製工場なのである。

ここでも二渡さんは職人さん泣かせである。

前に書いたが、「RIDERS N-3B」の袖の内部には、リブ織りのインナーとムートンが縫い付けてある。ジャケットの袖もリブ織りのインナーも、どちらも筒型である。筒型の袖の内側に、筒になったインナーをミシンで縫い付ける。筒に筒をミシンで縫い付ける。

「手縫いならできるだろう。でも、いったいどうやってミシンの針の下をくぐらせるのだろう?」

その作業は著者の想像力をはるかに超える。
それだけではない。ムートンは羊の毛皮である。毛の部分を同じ長さに切りそろえ、狙った色に染め上がったムートンのシートがこの工場に届くと、リボン状に切り離して袖口に縫い付ける作業が始まる。
そもそも毛皮は分厚いから針が折れやすく、ミシン泣かせである。それを筒状の袖の内側に縫い付ける……。頼まれた社長でなくても

「こんなパターンじゃ縫えねえよ!」

と泣き言の一つもいいたくなるはずだ。

「それにね、ジャケットにはどうしても部分的に力がかかるところがあって、その部分の縫い目が裂けやすいんです。うちのものは『一生もの』ですからその部分は何度も糸を通して強化してありますが、これも面倒な作業らしいんですよ」

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