小黒金物店 第7回 一人だけの弟子
福島からバイクで乗り付けた高校生がいた。 「俺、鍛冶屋になりたいんです。伝統工芸士を目指してます。弟子にしてもらえませんか?」 ほう、福島からわざわざ、ね。しかも、まだ高校生で。どこで私を知ったのか? 悪い気はしな...
福島からバイクで乗り付けた高校生がいた。 「俺、鍛冶屋になりたいんです。伝統工芸士を目指してます。弟子にしてもらえませんか?」 ほう、福島からわざわざ、ね。しかも、まだ高校生で。どこで私を知ったのか? 悪い気はしな...
何度か来たことがある若者だった。刀の鞘を作るナイフと特殊な鑿を作ってくれという。引き受けて鍛冶場に入ると、そのままついてきて横に立ち、小黒さんの仕事をじっと見ている。 よほど刃物が好きなのだろう。時々こんな客がいる。だか...
私に小黒さんの存在を教えてくれたのは斉藤さんだった。別件の取材で前橋市の群馬大学医学部を訪れたときだ。見知らぬ学生が寄ってきて、突然 「記者さんですか?」 と聞いてきた。恐らく、一眼レフのカメラをぶら下げていたからだろう...
2017年夏の、ある夕暮れのことだった。そろそろ夕食という頃、桐生市役所から電話が来た。 「小黒さんの店に行きたいといって、神奈川県から女性が見えています。ちょっと遅いけど、お店に案内していいですか?」 すでに店のシャッ...
現代の名工。 「あなたが身につけた技能は飛び抜けて優れている」 と国が認め、厚生労働大臣の表彰を受けた「卓越した技能者」の通称である。職人として最高のお墨付きをもらうのは毎年150人(1995年度までは100人)で、19...