ミシンの魔術師—大澤紀代美さん 第17回 死のう
眼球の奥底に網膜と呼ばれる部分がある。眼球のレンズを通して入ってきた映像が像を結ぶところで、フィルムカメラのフィルム、今風のデジカメなら撮像素子に当たる部分である。網膜炎とは、網膜に不要な光が来ないように守っている色素上...
眼球の奥底に網膜と呼ばれる部分がある。眼球のレンズを通して入ってきた映像が像を結ぶところで、フィルムカメラのフィルム、今風のデジカメなら撮像素子に当たる部分である。網膜炎とは、網膜に不要な光が来ないように守っている色素上...
右目だけは助けたい。その闘いは、さらに1年半ほど続いた。相変わらず自宅での静養、具合が悪くなれば入院、の繰り返しだった。 大澤さんにとっては視力を守り通せるか、失うかの闘いではなかった。生きていくことが出来るか、自殺する...
「今になって考えると、無謀だったと思いますよ」 と大澤さんはいう。無謀とは、愛誠園の園長さんが去って1週間もしないうちに和筆を手にして下絵を描き始めたことをいう。下絵は刺繍を始める準備作業である。大澤さんはすっかり「悲母...
大澤さんは2018年、78歳になった。10年ほど前に一度寝込んだがいまはすこぶる元気で、市内のマンションの一室を借りた自宅兼作業場「アトリエ きよみ」と、桐生の目抜き通りである本町通に設けた「シシュウ ギャラリー」を往復...
大澤紀代美さんの半世紀は前回で書き終えた。ずいぶん長い連載だったが、終えてみたら、大澤さんにお借りした写真が5枚、使わないまま残った。20回に渡って書いてきた話に、それらの写真を使うに相応しいところがなかったからである。...