FREE RIDE ライダーは桐生を目指す その7  RIDERS N-3B

何度も説得した。社長が

「じゃあやってみましょう」

と折れてくれたのは、二渡さんの熱意のたまものだろう。

パターンを描き始めた。袖を普通のジャケットより6、7cm長くした。袖口にはムートンを縫い付け、加えて中にセーターの袖口のようなリブ織りのインナーをつけた。これでバイクで運転姿勢を取っても、袖はつり上がらず、袖口からの風を防ぐことができる。

着丈はハーフコートほどに長くし、裾にひも(ドローコード)を通した。腰が露出するのを防ぎ、ひもを結べば裾が閉まってバタつかない。

首回りは、ジッパーを引き上げると鼻まで届くタートルネックになるようにした。乗るときはこれを折り曲げる。首筋から風は入らない。

腕が自然に動くように袖は部分的に絞り、立体的な造形にした。袖と胴の部分を繋ぐところは斜めにカットするラグランスリーブを採用した。
……。

「二渡さん、こんなパターンじゃ縫えねえよ!」

社長からは何度も泣きが入った。

「そこを何とか。こうしないと私が思っているジャケットにならないんです!」

と拝み倒した。
その日、店を閉め、食事も済ませた深夜、工場に立ち寄ってみた。昼間は泣き言を言っていた社長がミシンに向かい、二渡さんが描いたパターンを何とか縫い上げようと悪戦苦闘していた。

試作品ができると自分で身につけ、バイクを翔った。

「社長、まだこのあたりがね……」

そうやって改良した試作品は5、6着に上る。

「よし、これでいい!」

いまでも売れ続けている不朽の名作、「RIDERS N-3B」ができた。

「あれ? いつだっけ。1996年? 97年かなあ」

写真:これが「RIDERS N-3B」

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