半信半疑のまま、言われるままに1着送った。
送ったときは半信半疑でも、「RIDERS N-3B」が掲載されるはずの雑誌が店頭に並ぶ日になると期待が高まるのは誰しも同じだろう。
「どんな風に紹介されているのか?」
その日書店に走った二渡さんは、店に戻る時間ももどかしく、ページを繰った。
「小さくてもいい。どこかに出ていれば人目につくだろう。そうすれば売れ行きも少しは変わるかも知れない」
いつもの癖で、雑誌を後ろのページからめくった。期待で胸は高まり続けるのに、探す記事は出てこない。後ろから3分の2ほどめくっても「RIDERS N-3B」は登場しない。
「ああ、初めてなんだから、田舎町でできたジャケットだから、残る3分の1、雑誌の目玉記事が集まっている前の方で紹介されるはずはないよな」
期待がシャボン玉のようにしぼんだ。
確か、その翌日だった。店の電話が鳴った。受話器を取り上げると、今度も聞いたことがない声だ。
「あのー、この『RIDERS N-3B』ってジャケット、置いてありますか?」
「はい、ありますが、どこでお知りになったんですか?」
「はい、今月の『VIBES』で見て、どうしても欲しくなりまして」
「えっ? 私も今月号の『VIBES』には目を通したんですが、載ってました? 私は気がつかなかったんですが」
「載ってますよ。しかもトップ記事で詳しく、写真付きです。これ、いいですね! 是非欲しいんです」
写真:このカウンターで電話を受けた。